【あらすじ】
 2010年11月18日、米ジョージア州にある託児所のそばで事件は起きた。
2歳になる息子を預けにきた父親が帰り際、何者かに銃撃された。撃たれたのはラッセル・スナイダーマン当時36歳)
目撃者によると、スナイダーマンは3発撃たれ、その後とどめの1発すぐさま病院に運ばれたが、死亡した
 スナイダーマンはハーバード大卒のエリート、1億円あまりの資産を残していた。
登場人物
ヘミー・ニューマン・・・妻と子供3人の5人家族。大手家電メーカーに勤務し3000人以上の部下を持つ。ラッセルを銃殺した。
アンドレア・スナイダーマン・・・銃殺されたラッセルの妻。勤める会社でヘミー・ニューマンの部下であった。
ラッセル・スナイダーマン・・・ハーバード大卒のエリート。ヘミーに銃殺された

【事件に至るまでの経緯】
 同じ会社に勤めるヘミーとアンドレアはただの上司と部下の関係だけではなかったヘミーはアンドレアに思いを寄せ、執拗に迫っていた。事件後公開されたメール文書は4000ページを超えていた。
 だが、
アンドレアのの命を奪う必要があったのか

 この事件はヘミーがアンドレアを独占したい一心で起こした身勝手な事件だと考えられていた

【裁判】
 2011年2月アメリカ・ジョージア州でこの事件の裁判は行われた。
だがこの裁判は被告を裁くだけの裁判ではなく、事件の黒幕をあぶり出すワナが仕掛けられていた

 裁判の冒頭、検察側は事件の詳細を説明した。
「ラッセルは息子を託児所に預け、キスをした。それが息子にとって最後の記憶となった。その後ラッセルは至近距離から撃たれ、死亡しました。」
 傍聴席から妻アンドレアのおえつが響いた。

-傍聴席のアンドレア-
アンドレア














 検察側はこの妻アンドレアを最初の証人に選んだ。検察の質問に対して、気丈にふるまうアンドレア。
このアンドレアは延べ2日間、およそ7時間にわたり、亡き夫への愛、事件を知った時の感情などを語った

-証人として検察の質問に答えるアンドレア-
アンドレア3














 次に証人に呼ばれたのは事件の目撃者。ヘミー被告を目の前に、この男が犯人だとはっきり証言した。
また、射撃場の店員がヘミー被告が射撃の練習をしていたという証言をした。
 
 すべての証拠はヘミー被告が犯人だということを物語っていた。しかし、ヘミー被告は穏やかな表情。

-裁判を見守るヘミー被告。終始何も語らなかった。-
ニューマン













 次に弁護側。一枚の大きなボードを取り出した。
そのボードにはヘミー被告とアンドレアのデートの記録が事細かに示されていた。
ファーストキスの場所、初夜はいつだったか、二人の情事が法廷で暴露された。

-弁護側が証拠として出した二人のスケジュールボード-

ボード

















 弁護側の証人にはバーの店員。
二人とも自分たちの世界に入り込んで、情熱的にキスをしていました。

 弁護側は一貫して、二人の関係はヘミー被告の一方的な片思いではなく、不倫関係だったと主張した。
アンドレアの言動が犯行の動機となり、彼女は被告をもてあそんでいたと説明した。アンドレアに犯行を仕向けられ、洗脳された被告は無罪だと主張した。首を振るヘミー被告。

この弁護側の主張から裁判は一変した。
各メディアで、未亡人アンドレアが事件に関与しているのではないかと報道された。

 検察側もアンドレアに対して、不倫関係についての質問を投げかけた。
だがアンドレアはこれを真っ向から否定。彼からストーカー行為を受けていたのだと主張した。
ヘミー被告は顔色ひとつ変えず、アンドレアの答えを聞いていた。
 そして、検察側はアンドレアの親友・シェイナを証人として呼んだ。

質問に答えるアンドレアの親友・シェイナ-
シェイナ











 シェイナはアンドレアとヘミーの関係について、証言した。アンドレアからヘミー被告との不倫関係について話を聞いたかと問われ、「彼女は否定していました。しかし、私には信じられませんでした。」と唇を震わせ答えた。
 アンドレアにとって不利な証言であった。
証言台から傍聴席に戻る際、アンドレアはシェイナを抱き寄せ、キスをした。
 自分を裏切った親友に対して、辛い思いをさせたことを謝罪したのだろうか。

-シェイナを抱き寄せるアンドレア-
シェイナ・アンドレア

















 そして判決の日、陪審員が不倫関係をどう捉えるのかが注目された。
陪審員の出した評決は有罪。事件は計画的、終身刑が下された
アンドレアが犯行を仕向けた黒幕という弁護側の主張は通らなかった。

 しかし、判決から5ヵ月後、アンドレアは夫殺害容疑で逮捕起訴された

アンドレア2













実は検察側は事件当初からアンドレアの事件関与を疑い、ワナを仕掛けていたのだ。
 裁判に仕掛けられていたワナとは一体なんだったのか。

 裁判初日、検察は最初の証人としてアンドレアを呼んだ。
そして、こう質問した。
 検察「事件のあった朝、託児所から電話を受けましたね?
 アンドレア「はい
 検察「電話ではなんと?
 アンドレア「ただ事故があったとしか言われませんでした。

 彼女は病院につくまで事故にあったとしか聞いてないと証言していた。
しかし、病院に行く前に彼女はある人物に電話をしていた。裁判で証人にもなった親友・シェイナだ
その電話の内容をシェイナはこう証言している。
 「彼女は病院に行く途中、私に電話してきて、ラッセルが銃で撃たれたと・・・

 事故としか知らされていないはずのアンドレアは何故銃で撃たれたことを知っていたのか。
犯人にしか知りえない銃で撃たれたという事実。これは共犯者である証拠となった。
アンドレアのこの証言を引き出すことが裁判に仕掛けられた罠だったのだ。

 事件後、すぐさまアンドレアを疑った検察だが、証拠も何もない状態で逮捕すれば何も喋らなくなる。
検察はヘミーの裁判で証人として呼び、ボロを出すのを狙うという作戦を立てたのだ。
 
 しかし、何故このアンドレアが疑われたのか。実は夫の死亡により、1億6000万もの保険金を受け取っていたのだ。
 そして、裁判で不利な証言をした親友・シェイナに対して抱き寄せた際、アンドレアは耳元でこうささやいていた。
 
 「あなたはもう友達ではない。これからどうなるか覚えておきなさい」

【まとめ】
 不倫関係からはじまる一連の裁判劇場。
被害者であるはずの未亡人アンドレアが実は共犯者であることを見抜いていた検察は、裁判にワナを仕掛け、見事に共犯者である証拠を引き出した。
 事件直後、そして裁判中も一切アンドレアが共犯者であることは語らなかったヘミー被告。すべてはアンドレアへの純粋な思いからだったのだろうか。


参考:フジテレビ・世界法廷ミステリー (2013.2.2 OA)